大阪市西成区の訪問看護ステーション「ひなた」。
所長の梅田道子さんに、こんな話をうかがいました。
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最近Aさんの姿が見えないからと、
気になって、福祉の人が部屋を訪問。
三畳一間の部屋では、ひどい姿でAさんが横たわっていた。
すぐに梅田さんが呼ばれて駆けつけた。
便まみれ。低血圧。動くことができない状態。
すぐに側にいき、膝に手をやり、
「今まで、しんどかったね、しんどかったね。」
と言って、身体をさすった。
しばらしてから、
「救急車呼ぼうね」
と言ったら、
Aさんはうなづいた。
他の人がいくら言っても、
救急車を呼ぶことや受診することを頑なに断ってきた人だった。
数日後、Aさんは病院で亡くなった。
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私は、
「なぜ、梅田さんが言ったら、Aさんは救急車を呼ぶことに、”うん”と言ったと思いますか?」
と聞きました。
梅田さんは、しばらくして、こう答えられました。
「私たちは、便まみれでも臭いがしても、まずその人に触れるでしょ。そして、”あなたのことが、とても大切だ”と思って話しかける。だからでしょうか。」
その状況だけをとれば、
血圧を測って救急車を呼んだだけ
になります。
でも、そうじゃない。
部分や見えている現象だけじゃない、その全体性を作り上げる中に看護の力があるんだと、
私は、自分の中の深いところが動く感覚を覚えました。
梅田さんは、
もっと早くAさんを見つけることができていれば・・・
という気持ちを今でも持っています。
その梅田さんの悔しさもわかります。
でも、敢えて言います。
Aさんは、最期に自分のことを心から大切に思ってくれる人に出会えてよかったと思っているんじゃないかって。
あなたは一人ではないと、マザーテレサか言っていましたね
その言葉が、早く全ての人に伝わるような一助を、私なりにしたいと思います。