[森陽子、大山裕美子、廣岡佳代、深堀浩樹、日本看護管理学会誌、20(2)104-114, 2016]
加速度的な高齢化社会の中、地域にねざす看護活動に注目が集まっています。
これまでどおり、医療機関における看護はなくてはならないものですが、
訪問看護や在宅看護への労働力投入はまったなしです。
この論文は、
かつては病院で勤務していた看護師が、訪問看護へ移行した時に経験した困難の様相とその関連要因を明らかにすることを目的としています。
東京都内という限られた範囲ではありますが、113事業所から165名の回答があったとのことで、
どのような事業所特性が困難感に影響するかも分析されています。
さて、結果です。
困難感は、
医療保険制度や介護保険制度に関する知識不足
によるものが最も多いことがわかりました。
→ 私は少しほっとしました ☺
なぜなら、知識不足は、補うことが比較的容易だからです。
次に続くのは、
未熟であることや、
時間内にケアを終えなければならないこと、
一人で訪問しケアする責任の重さ
です。
→ これらは、ちょっとやっかいです。
でも、以前勤務していた病院での看護実践能力の自己評価が低いことや、一人で訪問を開始するまでの期間が1週間未満であることが、困難感を強めていることも同時に示唆されています。
つまり、著者らが指摘するように、
本人たちの能力に応じた訪問活動からスタートすることや、同行訪問の期間を長めに設定することで、困難感の軽減が期待できるのです。
組織の特性としては、
比較的小規模の事業所では訪問看護件数の負担感が大きいことが示唆されています。
いずれにしても、この論文で明らかになった困難感は、
基礎教育や現場教育で和らげることが可能だと思います。
課題が明らかになれば、羅針盤を得たようなものですから。
この論文は、現時点での最新論文の一つですが、調査時期は2013年の8月から9月です。
その間に、 新卒看護師が訪問看護の世界に入ってくる時代にもなりました。
それぞれの事業所が工夫して、
すでに、力のある人たちを訪問看護の世界に迎え入れる体制を整えてきているようにも思います。