『医療者が語る答えなき世界:「いのちの守り人」の人類学』

投稿者: | 2018年1月18日

磯野真穂、『医療者が語る答えなき世界:「いのちの守り人」の人類学』ちくま新書 2017

 ときどき素敵な本をプレゼントしてくれる上條美代子さんから、「これ、次の課題図書です!」と年末に手渡された。
上條さんには、週末にお会いする予定だから、今日のうちにアップしよう。

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患者や家族の目線で語られた医療の本はたくさんある。医療者が書いた本も五万とある。しかし、双方の世界の交わりの微妙な部分を俯瞰し、その上で医療やケアをする側の視点からそこを書き切った本にはあまり出会わない。

著者は、医療を一つのフィールドとする文化人類学者。

本書では、医療や介護の専門家世界に身を置き、それらを受ける側の人たちにどう向き合っているのかを描く。

それらの専門家が、その場に身を置く実践家だからこそうまく表現しきれない一事例や一瞬に宿る思考・感情、あるいは行動のわけを鋭い観察で描写してくれる。そして、プロだから敢えてそこまで言わないことを、極めて適切に言い放ってくれる。

患者をドーム型の機械浴に入れるケアワーカー、呪術のようなタブーだらけの手術室で働く看護師、役に立っているというのは幻想ではないかと考える療法士、エビデンスに翻弄されそうになる医師・・・などの8つの物語は、どれも寒くて暖かい。

 

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