井部さんの突っ込みに応える管理者たち

投稿者: | 2018年1月11日

先の1月8日(月曜・祝日)、
京都にて、日本看護管理学会倫理学会のワークショップを開催しました
テーマは、「身体拘束と看護管理」

現場で見かける身体抑制。
やむを得ず・・・と言い聞かせながらも、どこかそれが当たり前になってはいないだろうか。
そういう現場での看護管理者の役割と責任は何だろうか。
そんなことをディスカッションするためのワークショップでした。
第1部では、患者を抑制することについて、管理者としてのモヤモヤ感がどのようなものかを表現してもらいました。
そして、京都市民病院での素晴らしい取り組みを発表してもらった後に、
第2部では、自分たちができることを考えてもらいました。

ちょっときれい事も言いたくなるけれど、本音で話さないと何も出てきません。
そこを、倫理委員会の井部俊子委員がびしばしと切り込んでいきます。
当たり障りのない言い回しや他人事に聞こえてしまうような表現、そしてグループの意見として抽象度が上がりすぎた見解などは、このワークショップでは必要ありません。
倫理の問題、人権の問題について、自分がどう感じ、どう考え、何をこれからしていくのかをしっかり考えるように、井部さんは突っ込むのです。

最初は戸惑っていた参加者たちも、
講義を聴くだけの研修会ではなく、ワークショップであることを理解し始めました。そして、井部さんの突っ込みにも応えていくようになりました。

私は委員長としてその場にいました。
参加者と井部さんとのやりとりを聞きながら、
もしかしたら、私たちは、自分の価値観や倫理観を、規範やガイドラインに照らし合わせて、頭で考えるように訓練されすぎたのではないかと感じていました。
京都市立病院の岩崎百合子さんは、人が人を抑制することを「非人道的」と言い切りました。そこからしか抑制をはずしていく改革は生まれなかったといいます。

このワークショップは、倫理的な問題を、頭ではなく身体全体で捉え、魂を揺さぶられることは何なのかをディスカッションするものでした。

最後に、参加者が考えたことを書いてもらい、道具箱に集めました。
どのようなことが書かれているのか楽しみです。

同じワークショップを2月に東京で開催します。
既に定員に達していて申し込みは締め切っていますが、またレポートしたいと思います。

井部さんの突っ込みに応える管理者たち」への2件のフィードバック

  1. 余語真夫

    こんにちは。

    倫理的問題を頭ではなく身体全体でとらえるという表現、まさに仰る通りですね。

    心理学の視座では、善悪判断の根底には身体感覚があります。

    心理的苦痛は身体的苦痛に由来する。自己にとって苦痛なことは悪である。

    身体を拘束されるのは人間にとっては最大の苦痛の一つです。

    人間の身体は絶えず動いています。その動きを抑え込むことは、心身の健康にも有害。抑え込まれた人は必死で抵抗しなければならなくなり、心身ともに消耗します。

    勝手に動かれては管理できないから拘束するのでしょうが、拘束以外の手段で患者の行動をうまく統制することは可能です。要するに、面倒くさいから拘束するのであり、それは患者サイドには拷問以外の何者でもありません。

    返信
    1. katsuhara 投稿作成者

      自分や自分の身内が拘束されることを想像すると、拘束が、いかにされる側の心身を怯えさせる事になるかは、誰でも理解できます。今後は、医療者側の「やむを得ない状況」についも、もっと公に議論されるべきだと思います。

      返信

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